2009年12月16日
毎日 使って欲しいのよ(一和堂工芸)
屋島の一和堂工房さんは「まちかど漫遊帖古高松コース」でお世話になった大渚亭さんから北へ一足伸ばしたところ。
■川べりのショールーム&工房を訪ねると、着物姿の浅野さんが出迎えてくださいました。

「日本人やからね、週に何回かは着物で過ごしたいなと思ってるの」
と言われます。
その気持ち、私も一緒です!!
着物は「よそ行き」って仕舞い込むより、どんどん楽しんでしまいたい、箪笥から出してやりたいと思うのです。
それは、もの全般に言えることかも知れません。
職人さんたちも、仕舞い込まれることよりも使ってくれることを思いながら作っているのですから。
そんなこんなで最初から盛り上がって、取材というより「まち」のことや「産業」のこと「文化」のことなど、
お友だちと話すような雰囲気ではじまった、「うるしギター」の漆部分を請け負った一和堂さんとのお話。
■もともとは、私もちょっと関わった産コラからお話ははじまります。
漆・盆栽・石といった、高松の産業をコラボして新しいものをという考えは素晴らしく、
いろいろ作ってみましたが、見て注文という商品の流通はなかなか難しかったようです。
「みなさん、見て欲しい人はすぐに持って帰りたいでしょ?」
と浅野さんがいわれるのは、女の人だからわかることかも。
「欲しいときが買いどき」なんですよね。
そんななか、次に来た依頼が「ギターに漆をかける」という企画。
それを聞いたとき、どう思いましたか?と尋ねると、
「なんにでも塗れるから、大丈夫ですよ」
とすぐ答えたそうで、心配したのは音色がどうなるんだろうということぐらいだと言います。
そこが、浅野さんのおじいちゃんから90年つづく老舗工房の自信でもあり、職人への信頼でもあるってことです。
■香川県の漆の技術は全国的にも高く、高技術をもった職人さんも多く、
漆というと「輪島」と言われるけれど、実は輪島にもおとらぬ「漆王国」なのです。
そして、蒟醤や彫漆といった芸術品に近いものは別として、
後藤塗りも象谷塗りも普段遣ってこそ、その味がでる「雑器」。
だから、どんどん普段に使ってほしいと浅野さんは思っています。

でも、せっかく気に入っていただけたのに、
「食器洗機にかけられますか?」と尋ねられることもあり、
あぁ、今は使い方の所から提案していかないといけないのだなと感じているのでした。
だから、ガラスコップとクリスタルグラスは、使い方が違うでしょ。
ちょっと先に洗うとか、優しくあらって伏せるとか、そう言うちょっとした愛情をもってくれれば
漆は、少しも使いにくいものではないのよと話してあげるのだそうです。
地道な活動は、漆のカップを買った若いお母さんが、翌年、もう一度お買い物にきてくれたりと
実をむすびつつあります。

■漆がかけられたものを(うちのばばさまもですが)、片づけまわって特別な日にしか使わない傾向にありますが、
漆は、手近に置いて使い、洗ったり拭いたりすることで適度な湿度を保ち、美しさも増すのですが
仕舞い込まれた漆食器は乾燥しすぎて、突然の変化についていけず割れたりするのです。
つまりは、どんどん使うことが大事。
漆をかけることによって、食器は「強く」なります。
そして、「抗菌作用」に富んだ漆は、お料理を口に運ばれるまで守ります。
時間が経つほどに「硬く」なる「漆」の特徴により、使うほど食器は傷がつきづらくなるのです。
そのお話を伺いながら、
「ギターだって、そうですよね!」と言うと、
そうそう、ギターだって手元に置いて慈しんでやることで味も出てくるんでしょ?と浅野さん。
ここに、うるしギターの意味があるのです。
■ギターに漆をぬるとき、パーツごとにもってきてくださいと、浅野さんが言ったのは
このあと工房にはいり、漆塗りの様子をみてわかりました。
今回の「うるしギター」は、「摺り漆塗り」という技法がつかわれ、
ギターのもつ木目が美しく浮かびあがります。


漆はもともとは乳白色ですが、それを馬の毛を使った「打ち込み刷毛」で
生地に力強く塗り込むと、時間をおくと茶に変化していきます。
この最初の作業が一番きつい仕事で、ここがきちんとしていないとあとあとの仕事にも影響していきます。
うるしギターの場合、ペーパーをかけ、漆を塗り込み、「室」で乾かすという作業を10回繰り返しました。
この工程は、一日一度しか触れないので、単純に考えても10回10日。
漆を塗り込むだけでなく、湿度60% 温度20℃の「室」での管理も大事で、
それは今も職人さんたちの経験による勘でないと守れないものです。

うるしギターの制作依頼がきたのは6月中旬、漆の作業としてはよい時期ではありましたが、
ギターを作る中村さんも、漆をかける一和堂さんも、お披露目までに1ヶ月もなく、ぎりぎりの作業だったといいます。
この手間を考えると、もうちょっと時間あげてほしかったですね(ほんまに)
それでも、お披露目の日に間に合わせるのが、職人の心意気。
■漆の製品は、地域によって作られるものの特徴があって、山中や会津はお椀が多いのですが、
香川はお盆。
お盆をつくるとき表面の部分も裏も同じだけ手間をかけ漆も同じ回数塗り重ねます。
そうすることで、硬く丈夫で美しい盆ができるのです。

ギターの場合、製品になったものの表の部分にのみ漆をかけるので、
反りがでないだろうかという心配でもありましたが、
そこは、ギターと漆、二人の職人の技術で大丈夫だったようです。
■さて、浅野さんとのお話は、今後の「うるしギター」のことについて。
もっともっと紹介してやってほしいのよという浅野さんは、
「うるしギター」を生み出した母として、漆のプロデューサーとしての声だと思うのです。
単に漆のかかったギターということだけではなく、
・ギターという媒体を通して、漆を知り
・漆という媒体を通して、ギターを知る
この二つがうまくいかないと、やっぱり一回限りのものになってしまうような気がします。
「ブリスクに、全部じゃなくてもいいから、せめてギター製作の工程、漆塗りの工程がわかる映像とかはながせないのかしら」
と浅野さんが言われ、
「香川大学の工学部のみなさんが関わっているブリスクですもの、それはその気になったらできることじゃないですか」
せめて記録としての映像はないのですかと聞くと、記録としても、ギターに漆をかけている映像が残っていないとのことで、とても残念。
(うちも、よく、あああ、ここでビデオまわなさいかんかったなと思うことはあるので、偉そうなことは言えないのですが!)
■後藤塗りの工程は24工程です。お盆に少しずつの変化をしるしたものを見せてくれました。

最後のほうはシロウトにはわからないほどの微妙なもの。
でも、この工程をきちんと踏み、なおかつ、ビジネスとして成り立つように、
いろいろなことを考えださなくてはなりません
この日の帰り、私は、浅野さんが若い人たちにも気軽に使ってほしいと考えた漆のカップをお買いあげ。
これはもともとは中国のものです。
それに、もう一度、日本の職人が磨きをかけ、漆を塗り重ね、きちんと仕上げました。
珈琲を入れても、焼酎の湯割りを入れても、似合う、渋い赤漆のカップは、使い込むほどに美しい赤が浮かび出てくるそうです。
楽しみ!
■漆をもっと日常に、「毎日使ってほしいのよ」「漆の良さを知って欲しいのよ」
それは、まちかど漫遊帖の「宗家後藤盆5代目 後藤孝子ちゃん」も、いつも言っています。
二人は、3月、漆塗りとスイーツのコラボ展に出展されるとのこと。
是非是非、手にとって漆を感じてほしいと思うのです。
■川べりのショールーム&工房を訪ねると、着物姿の浅野さんが出迎えてくださいました。

「日本人やからね、週に何回かは着物で過ごしたいなと思ってるの」
と言われます。
その気持ち、私も一緒です!!
着物は「よそ行き」って仕舞い込むより、どんどん楽しんでしまいたい、箪笥から出してやりたいと思うのです。
それは、もの全般に言えることかも知れません。
職人さんたちも、仕舞い込まれることよりも使ってくれることを思いながら作っているのですから。
そんなこんなで最初から盛り上がって、取材というより「まち」のことや「産業」のこと「文化」のことなど、
お友だちと話すような雰囲気ではじまった、「うるしギター」の漆部分を請け負った一和堂さんとのお話。
■もともとは、私もちょっと関わった産コラからお話ははじまります。
漆・盆栽・石といった、高松の産業をコラボして新しいものをという考えは素晴らしく、
いろいろ作ってみましたが、見て注文という商品の流通はなかなか難しかったようです。
「みなさん、見て欲しい人はすぐに持って帰りたいでしょ?」
と浅野さんがいわれるのは、女の人だからわかることかも。
「欲しいときが買いどき」なんですよね。
そんななか、次に来た依頼が「ギターに漆をかける」という企画。
それを聞いたとき、どう思いましたか?と尋ねると、
「なんにでも塗れるから、大丈夫ですよ」
とすぐ答えたそうで、心配したのは音色がどうなるんだろうということぐらいだと言います。
そこが、浅野さんのおじいちゃんから90年つづく老舗工房の自信でもあり、職人への信頼でもあるってことです。
■香川県の漆の技術は全国的にも高く、高技術をもった職人さんも多く、
漆というと「輪島」と言われるけれど、実は輪島にもおとらぬ「漆王国」なのです。
そして、蒟醤や彫漆といった芸術品に近いものは別として、
後藤塗りも象谷塗りも普段遣ってこそ、その味がでる「雑器」。
だから、どんどん普段に使ってほしいと浅野さんは思っています。
でも、せっかく気に入っていただけたのに、
「食器洗機にかけられますか?」と尋ねられることもあり、
あぁ、今は使い方の所から提案していかないといけないのだなと感じているのでした。
だから、ガラスコップとクリスタルグラスは、使い方が違うでしょ。
ちょっと先に洗うとか、優しくあらって伏せるとか、そう言うちょっとした愛情をもってくれれば
漆は、少しも使いにくいものではないのよと話してあげるのだそうです。
地道な活動は、漆のカップを買った若いお母さんが、翌年、もう一度お買い物にきてくれたりと
実をむすびつつあります。

■漆がかけられたものを(うちのばばさまもですが)、片づけまわって特別な日にしか使わない傾向にありますが、
漆は、手近に置いて使い、洗ったり拭いたりすることで適度な湿度を保ち、美しさも増すのですが
仕舞い込まれた漆食器は乾燥しすぎて、突然の変化についていけず割れたりするのです。
つまりは、どんどん使うことが大事。
漆をかけることによって、食器は「強く」なります。
そして、「抗菌作用」に富んだ漆は、お料理を口に運ばれるまで守ります。
時間が経つほどに「硬く」なる「漆」の特徴により、使うほど食器は傷がつきづらくなるのです。
そのお話を伺いながら、
「ギターだって、そうですよね!」と言うと、
そうそう、ギターだって手元に置いて慈しんでやることで味も出てくるんでしょ?と浅野さん。
ここに、うるしギターの意味があるのです。
■ギターに漆をぬるとき、パーツごとにもってきてくださいと、浅野さんが言ったのは
このあと工房にはいり、漆塗りの様子をみてわかりました。
今回の「うるしギター」は、「摺り漆塗り」という技法がつかわれ、
ギターのもつ木目が美しく浮かびあがります。
漆はもともとは乳白色ですが、それを馬の毛を使った「打ち込み刷毛」で
生地に力強く塗り込むと、時間をおくと茶に変化していきます。
この最初の作業が一番きつい仕事で、ここがきちんとしていないとあとあとの仕事にも影響していきます。
うるしギターの場合、ペーパーをかけ、漆を塗り込み、「室」で乾かすという作業を10回繰り返しました。
この工程は、一日一度しか触れないので、単純に考えても10回10日。
漆を塗り込むだけでなく、湿度60% 温度20℃の「室」での管理も大事で、
それは今も職人さんたちの経験による勘でないと守れないものです。
うるしギターの制作依頼がきたのは6月中旬、漆の作業としてはよい時期ではありましたが、
ギターを作る中村さんも、漆をかける一和堂さんも、お披露目までに1ヶ月もなく、ぎりぎりの作業だったといいます。
この手間を考えると、もうちょっと時間あげてほしかったですね(ほんまに)
それでも、お披露目の日に間に合わせるのが、職人の心意気。
■漆の製品は、地域によって作られるものの特徴があって、山中や会津はお椀が多いのですが、
香川はお盆。
お盆をつくるとき表面の部分も裏も同じだけ手間をかけ漆も同じ回数塗り重ねます。
そうすることで、硬く丈夫で美しい盆ができるのです。
ギターの場合、製品になったものの表の部分にのみ漆をかけるので、
反りがでないだろうかという心配でもありましたが、
そこは、ギターと漆、二人の職人の技術で大丈夫だったようです。
■さて、浅野さんとのお話は、今後の「うるしギター」のことについて。
もっともっと紹介してやってほしいのよという浅野さんは、
「うるしギター」を生み出した母として、漆のプロデューサーとしての声だと思うのです。
単に漆のかかったギターということだけではなく、
・ギターという媒体を通して、漆を知り
・漆という媒体を通して、ギターを知る
この二つがうまくいかないと、やっぱり一回限りのものになってしまうような気がします。
「ブリスクに、全部じゃなくてもいいから、せめてギター製作の工程、漆塗りの工程がわかる映像とかはながせないのかしら」
と浅野さんが言われ、
「香川大学の工学部のみなさんが関わっているブリスクですもの、それはその気になったらできることじゃないですか」
せめて記録としての映像はないのですかと聞くと、記録としても、ギターに漆をかけている映像が残っていないとのことで、とても残念。
(うちも、よく、あああ、ここでビデオまわなさいかんかったなと思うことはあるので、偉そうなことは言えないのですが!)
■後藤塗りの工程は24工程です。お盆に少しずつの変化をしるしたものを見せてくれました。
最後のほうはシロウトにはわからないほどの微妙なもの。
でも、この工程をきちんと踏み、なおかつ、ビジネスとして成り立つように、
いろいろなことを考えださなくてはなりません
この日の帰り、私は、浅野さんが若い人たちにも気軽に使ってほしいと考えた漆のカップをお買いあげ。
これはもともとは中国のものです。
それに、もう一度、日本の職人が磨きをかけ、漆を塗り重ね、きちんと仕上げました。
珈琲を入れても、焼酎の湯割りを入れても、似合う、渋い赤漆のカップは、使い込むほどに美しい赤が浮かび出てくるそうです。
楽しみ!
■漆をもっと日常に、「毎日使ってほしいのよ」「漆の良さを知って欲しいのよ」
それは、まちかど漫遊帖の「宗家後藤盆5代目 後藤孝子ちゃん」も、いつも言っています。
二人は、3月、漆塗りとスイーツのコラボ展に出展されるとのこと。
是非是非、手にとって漆を感じてほしいと思うのです。
Posted by るいまま at 14:55│Comments(0)
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