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2016年02月01日

みすゞの眼差しから 何を読み取る


6月に再び 音楽と言葉「金子みすゞ」をやることになり、また本を書き直すための資料読みに入っている。

11月に金子みすゞを演じて以来、熱狂的「みすゞフリーク」となった杉ノ内が、先日の打ち合わせのとき、読んで欲しいと置いて帰った、

早坂暁とみすゞ記念館館長矢崎節夫さんの対談「金子みすゞは浮世絵だ」を読んでいて、

「大正」という時代の話に大きくうなずくところがあったのでメモしておく。

大正時代は、維新以降現代までの日本で、最も文化の花開いた時代だと私は思っている。

その頃に青春時代を送った人たちは、今の「自由そうにみえて管理されっぱなしの日本人」からは想像もできないような「柔軟な思考」で暮らしている。

きっと、昨日までのことが全部間違ったことになってしまった維新前生まれの親たちは、

「時代に負けるな立身出世こそが美徳」と生き抜いたはずで、それは第二次世界大戦後の日本を立て直した人たちにも似ている。

維新の風も落ち着き、ようよう日本が豊かになったころ青春時代を送った作家の作品はいまもなお読み継がれているものが多く、金子みすゞもその頃の作家だ。

夫の宮本が、彼女の詩作を許さず、彼女はさまざまな事情によって自死を選ぶ。つまり宮本は、維新を引きずる明治男のような人であったのは想像がつく。

しかし、だからといって「なぜ、こんなにも社会を見る目があり、聡明で、子どもへの愛情も豊かなみすゞが,子どもを置いて死んでしまったのだ」という疑問は、

音楽と言葉「金子みすゞ」を書いた2010年からずっとあり、

初稿では、彼女自身はなくなっても、それは母ミチ、みすゞ、みすゞの娘ふーちゃんと命を繋げることで未来に繋がったのだ、彼女の言葉が残ったのだという結論にして書き上げた。

しかし、先日来、再びみすゞのことを思いながら、

これが大正時代でなくて、第二次世界大戦後の話であれば、彼女は死を選ばず、どのようにしても生き抜いたのではないかという仮説をもつようになった。

早坂×矢崎対談で、早坂が言っている、彼女が生まれた山口(長州)というところは、偉大な人々がたくさん生まれたまちで、そういうまちにおいて、文芸や詩作などというものはとるに足らぬものと言われる。

「おまえは、なにも成さずに人生をおくり、いったいなにをしてたんだ」といわれる土壌のなかで詩作をつづけるのは、ほかの地以上の圧力を跳ね返さなくてはできない。

特に維新の志士が多かった長州であれば、そんなことよりも国を動かすような人になれという考えは根強く残っていたはずだ。

みすゞと同郷の中原中也は、世間に対し申し訳なかったというような言葉を何度も書いている。

だからといって、世に言う立派な行いをしたいわけでもなく、中也らしく生きることしかできなかった。故に残せた言葉があるのだ。

この対談の中にも名前がでてくるが、長州の偉人たちを作った吉田松陰は、

勉強をすることやもともとの才以上に大切なのは「志」であると言う。

私欲のための立身出世ではだめだ、私心をすてるならばどう進もうとよしとも言っている。

「成功するせぬは、もとより問うところではない。
それによって世から謗(せんぼう)されようと褒められようと、 自分に関することではない。
自分は志を持つ。 志士の尊ぶところは何であろう。
心を高く清らかにそびえさせて、 自ら成すことではないか。」

仏も神も敵も身方も、すべては自分のなかにいる。自身で決め、自身で進む。

金子みすゞは、死の直前、日本童謡集に与謝野晶子につづき詩が載ることになっていた。西條八十との繋がりが消えてしまうことにも絶望は感じていた。

しかし、そういう事以上に、彼女自身として、許せなかったことがあったのではないだろうか。

その志を成せないのであれば、死を選ぶしかない。

それは、この時代、長州というまちに生まれ生きた作家ゆえの選んだ道だったのではないか。

亡くなる前日、写真館に行き、美しい自分の姿を残し「私は、ここにいます」という眼差しを向けている金子みすゞから読み取るものは、計り知れない。



そんなこんなで昼ご飯。





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