2019年04月30日
高松松平家博物図譜 江戸の超グラフィック 観賞記録
【超グラフィックの意味を知る】

香川県立ミュージアムで開催中の「高松松平家博物図譜 江戸の超グラフィック」を観にいく。
今回ほど8K動画の解説に感謝したことはない。動画での解説を観る前も、その緻密さに「素晴らしいな」と観賞していたのだが、
現代の画家、京都精華大学の諏訪智美さんが、衆鱗図の鯵を模写再現するまでの動画に記された「衆鱗図の作画の秘密」に圧倒され、もう一度引き返し、ひとつひとつの絵を見直した。
植物画の葉脈や根の形状、柔らかな花びら、禽類の羽の一枚一枚、何重にも重ねられた色からなる花や鳥の立体感も、もちろんなのだか、なんといっても「衆鱗図」なのだ。
骨格から鱗まで、単に「絵」の陰影や濃淡で描きわけたのではなく、切り抜き構造で立体感をだし、観る方向で色も膨らみも変化する3D構造になっている。
それは、銀箔を効果的に使い、光る光らないまでを計算し、鱗ひとつに何重もの色を塗り重ねる気の遠くなりそうな作業からなる。
この技法は、高松松平潘 代藩主 松平頼恭の博物図に対する強い思いと、それを理解し編纂に関わった平賀源内、そしてなにより、緻密な作業をやり遂げた讃岐の絵師たちによるもので、これを参考に描かれた博物図譜は日本のみならず外国にも及ぶ。
ミュージアムの解説によれば頼恭自身については、あまり文献に残されていないが、同じ時期を生きた儒学者 後藤芝山が書き残している帖を展示していた。
頼恭が讃岐の藩主となったのは1739年。讃岐は水不足に加え火災が多発し、凶作が続き、頼恭は質素倹約を実行し、藩士への禄も減らして財政再建を目指して、藩札を発行するなどの対抗策も行ったが、なかなか上手くいかず、
藩の収入を上げるために、平賀源内に薬草栽培を行わせ、のちに讃岐の名産となる砂糖栽培の研究も行う。潟元塩田が作られたのも、頼恭の頃だ。
花鳥図と博物図譜の違いは、両方とも緻密ではあるが、花鳥図は物語があるが、博物図譜はとても冷静であることだと思う。
物事を正確に伝えるためには一定の決まりを作り、冷静に作図し残す。それは、芸術性をもった職人気質があってこそできることだ。
ゴールデンウィークと瀬戸内国際芸術祭がかさなっているからか、会場は人を避けつつ観なくてはならないほどの盛況で、3時に入った私も120分では全てを観きれないほどの濃密さだった。
「美味しそう」というひと「着物柄にしても品がいい」というひと、
横から斜めから覗き動くように変化する博物図譜をみるひと(私だ)と、観賞の仕方も感想も様々。
お時間があれば、是非 ご鑑賞いただき、讃岐の国から発信された技術を目の当たりにして欲しい!
■「高松松平家博物図譜 江戸の超グラフィック」
開催期間 2019年4月27日(土)~5月26日(日)
開館時間9:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
夜間開館 午後8時まで(入館は閉館の30分前まで)
4月27日(土)~5月6日(月)5月10日(金)5月11日(土)5月17日(金)5月18日(土)5月24日(金)5月25日(土)
一般1000円 前売800円
瀬戸芸パスポート提示(1回限り)800円
玉藻公園との相互割引あり(2日間限り)

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