2023年06月16日
仕事は為す事
【仕事は為事】
すきなことで食べていくのはなかなか大変だ。
明治時代、華族のお嬢さんたちにお稽古ブームが起きるが、どんなに極めても決してそれを仕事にしてはならんという縛りがあった。
女が金を稼ぐとよくないことがあったのか、お金をいただくのは卑しいことと思われていたのか謎だが、
とにかく日本では、お稽古の伴う好きなことを職業にするのが難しい。
スロバキア国立バレエ団に所属していたバレエダンサーの本田千晃さんの「ちあこチャンネル」と、アメリカのバレエ団で働くバレエダンサー山本開斗さんの「ヤマカイTV」は開設当初から熱心にみていて、
最初は、十代から外国に暮らし、働くなんて大変だなと思っていたんだが、
日本でプロバレエダンサーとして自活するのは外国に暮らすより大変なことで、外国では職業として成り立つが、日本では自活できる枠が果てしなく少なく、文化の違いもあって、踊るチャンスも少ないと知った。
最近では、元ロシアバレエ団の女の子が、ロシアではギャラが支払われたのに、日本では踊るためにお金を祓わないといけないと話していて、
子どもの頃から、厳しい修行を積んできたのに、親の庇護がなければ生きていけない日本のシステムや意識は、まだまだ明治時代のままなのかもしれないなと思った。
数週間前、今年30歳になったちあこちゃんがスロバキアのバレエ団を退団して日本に帰ることになったと話した。
その少し前に、ご両親が日本からスロバキアに来られて、ちあこちゃんの舞台をみたり、観光したり、バレエ団のひとたちに日本の家庭料理をふるまったりしていたので、そろそろかなとは思っていたが、やはり寂しい。
17歳からスイス→チェコ→スロバキアと外国暮らしが続く中、お父さんは初めての訪問だったようで、精一杯親孝行したいとちあこちゃんは言った。
そして、お父さんは、私がバレエをつづけるためにずっと働いてくれていたからの言葉にジンときた。
両親に退団を告げた時、同情や慰留の言葉はなく、ちあこちゃんが決めたことならと受け入れてくれたとのこと。ご両親も精神的に自立された方なのだな。
退団の理由のひとつに「私はダンサーとしてここにいるので、踊るチャンスがなければ意味がない」と話していた。
京都なまりののんびりした女子だが、監督が変わって役がつきにくくなったときは、自ら監督に交渉にいき、背の小ささを言われたときには、別の身体づくりでこたえようとしていた。
交渉も努力もプロなら当然のこと。ただ嘆き悲しむだけでは埒があかない。
けど、なかなか日本人にはそれができないようで、先生の顔をつぶせないとか、言って事態がもっとわるくなったら困るとか、いろいろな思惑が一歩をとめる。
昨日、髪をベリーショートにして帰ってくると、ヤマカイも、先日結婚したスペイン人バレエダンサーのネレアさんとともにバレエ団を退団し、日本に活動拠点を移すと発表しており、新しいユニットで出発するそうだ。
バレエフリーク仲間と、外国から帰ってくる力あるバレエダンサーたちによって、お稽古ごとの延長ではなく、お稽古した技術が職業として成り立つバレエ界になってくれるといいねと、話している。
仕事は、為事。仕えて忍ぶことにも美徳はあるかもしれないけど、自ら為すべきことで花開くものもある。

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