2024年04月17日
愛すべきもの
【愛すべきもの】
#工藝とは何か。#ピンブロウ 硝子作家 #艸田正樹 さんと #赤木明登 さんの対話は、最初からすうっと入ってきた。
街づくり系のシンクタンクに勤めていた艸田さんは、休みの日に場を開放している下町の硝子工場に気軽な気持ちで行ってみる。
そこは、趣味の硝子教室というより、大学で勉強したひととか、ステンドガラス作家とか、誰かに教えてもらわなくても作れるひとばかり。
艸田さんは、工場の職人さんから「プロになる気はないんだね?」ときかれ、「会社員だからぜんぜんないです」と答え、「じゃひとりで作れる方法があるから」と、ピンブロウを教えてもらう。
ピンブロウは、私たちが思う吹き硝子ではない。パイプではなく鉄の棒の先にガラスを巻き、竿の反対側に小さな穴を開け、濡らした新聞紙で塞ぐと、水蒸気がでてガラスが膨らむ。
「いつか上手にできて、それでお酒でも飲めたらな」くらいの気持ちで始めたピンブロウにハマり、20年以上。今も、その気持ちはつづいている。
2年ほど、月に一度くらいのペースで硝子工場に通っていたが、会社に入社して3年目くらいから忙しくなり、硝子工場に通えなくなる。
そして5年目、自分に限界を感じ会社を辞める。その時、30歳。
会社を辞めてからの艸田さんが良い!
便利さや情報を遮断し、雪の重みで茅葺きの屋根が潰れるほど雪深い町 富山県八尾で「ひと冬過ごし、今後の結論をだそう」と暮らし始める。結局、5年をそこで過ごす。
赤木さんが、その5年何をやってたんですか?と問うと、
たまたま出会った富山の硝子教室で「ピンブロウだけできるんでやらせてください」と、ひとりで硝子を作り始める。
「やってみたら、またすごい気持ちがいいんです」
艸田さんは、師匠を持たない作家だ。自分でやってみて少しずつ進む。
溶鉱炉のなかは1000度から1200度。すごい炎に向き合わないといけない。危ないので気を抜くことはできず集中する。
「それが滝に打たれるような感覚になり、雑念が飛び、あれこれ考えなくなって、#いまあるこの瞬間だけになる」
でてくる硝子の透明が、自分に染み付いていたいろいろなものをリセットしたいという思いと感覚的、連想的に近かったと艸田さん。
「最終的にこういう形にしようというのはないんですか?」と赤木さんが聞いた。
「ないんです」
艸田さんの言葉を読み進めると、同じようにやっていても予定通りにいくわけではないことがわかる。
そんなときは、硝子に無理をさせない、硝子の言葉をきく、そして生まれたものは
「自分がデザインしたものではないけでど、きれいなものがあらわれた」というのが、
#いまつくる行為のなかのリアルな形。
「匠の技でものを仕上げるんじゃなく、自然現象の組み合わせでつくる器の形。人工の工藝品のうつくしさというより、自然界にあるもののきれいさが、ここにあらわれてくれれば、それが僕にとっていいもの」
艸田さんが前職から離れたほんとうの理由はわからないが、私自身、長くいろんな町を取材しながら思うのは、
美しく仕上げられた理想の都市計画やまちづくりの理念は、プレゼンの場では絶賛されるが、
実際、その街を歩けば、図面や計画のなかから削り取られた部分が見えてくる。
現実的なものは美しくはないかもしれないけれど、息づく町の姿だ。
夢のような机上の論ばっかり語る会議は嫌いだ。
そうしたものは流行りや他者の圧力によってずれていく。
大事なのは、いまここにある現実だ。
どうしようもない現実のなかに現れる「愛すべきもの」をすくい上げる。
艸田さんは、たぶん私よりずっとずっと若いけれど、それを知っているのだろうと思いながら5章を読み終えた。
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